Jungle Bird - ジャングルバード

  • 2017.07.14 Friday
  • 02:14

 

ティキ・ドリンクス(Tiki Drinks)というお酒のジャンルがあります。"Tiki"とは、古代ポリネシアの神話に流れをくむ文化で、それを由来として名付けられたこの言葉は、つまり、ポリネシア風のトロピカルカクテルを総称するものだと聞いています。アメリカでは、20世紀のハワイアンムーブメントのなかで多くのTiki Drinksが流行しました。有名なものとしては、マイタイ(Mai-Tai)や、スコーピオン(Scorpion)などが挙げられるでしょう。

 

今から約40年前(1978)、マレーシアはクアラルンプールにあるヒルトンの"The Aviary Bar"で、ひとつのカクテルが誕生したと記録されています。Tikiに相応しいレシピと生い立ちを持ったそのカクテルは、時の流れに埋もれて創作者の名前を失ってしまいましたが、近年のクラシック・カクテルブームや、Tiki文化への回帰を受けて、ヨーロッパやアジアの主要都市はもとより、現在 N.Y.で、ちょっとしたブームになって親しまれているようです。

 

■Jungle Bird - ジャングルバード

 

ダーク・ラム …………………30ml
カンパリ ………………………15ml
パイナップル・ジュース ……30ml
ライム・ジュース ……………10ml
シュガー・シロップ …………2tsps.

 

シェイクして氷を入れたオールドファッションドグラスに注ぐ。

(クラッシュドアイスのレシピもあり。)

パイナップルやチェリーを飾る。

 

※海外のサイトやカクテルブックを参考に、日本のバー向けに分量を調整して記載。

 

ベースのラムについて、当初はシンプルにダーク・ラムと記載されていましたが、時代とともにダーク・ラムからジャマイカン・ラムと、より具体的に。現代ではブラック・ストラップ・ラム(詳細割愛。おそらく日本未入荷)を指定するレシピが増えています。


一般的なスタンダードにありそうでなかった材料の組み合わせ。ダークラムの土臭さにカンパリの苦味、パイナップルのトロピカルテイストが、不思議な調和を感じさせます。残念ながら、日本では全くと言っていいほど知られていないようですが、世界的にはしっかりと不動の地位を確立したスタンダードカクテルです。この夏、ぜひ日本でもご賞味下さい。

 


Bar Kirkwall - バーカークウォール
広島市中区流川町2-22 インペリアル1st 2F
082-249-2140
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Boulevardier - ブールバーディエ

  • 2017.02.01 Wednesday
  • 02:14

 

Harry MacElhone氏のレシピ本にも登場する、100年近い歴史を持つ有名なカクテルでありながら、日本では悲しいほど知られていないブールバーディエ(ブールヴァルディエ)…。おそらく名前が難しくて定着しなかったゆえだと信じます。パリの大通り(ブールバード)を、肩で風を切って逍遥する"伊達者"を意味するカクテルで、海外では根強いファンを持つスタンダード。そして最も重要なことは、これがとても美味しいカクテルだということです。

 

■Boulevardier - ブールバーディエ


バーボン (ライウイスキー) ……1/3
カンパリ …………………………1/3
スイート・ベルモット …………1/3

 

オールドファッションドグラスにビルドする。

オレンジピールを絞りかける。

 

または、ストレートアップで。

ミキシンググラスでステア、カクテルグラスに注ぐ。

 

※海外の情報を参考に、標準的なレシピを集約して記述。

 

材料を見て気がついた方は…さすがです。"ネグローニ"のバーボンベースですよね。

 

つまり、ベースのジンが、バーボン(ライウイスキー)に代わったネグローニ・バリエーションといえます。しかしてこの組み合わせ、ともに綺麗なハーモニーを奏でるのはもちろんですが、仕上がりに驚くほどの印象の違いを生み出します。たとえば、ネグローニを "春夏の爽快なほろ苦さ" とすれば、ブールバーディエは "温もりを感じさせる秋冬" の印象といえるでしょう。

 

例としてネグローニと比較しましたが、他にも、クラシックなスタンダードのなかでは"オールド・パル"との対比が面白いところです。(難しい話をしているもようで恐縮ながら、日本人には、少々馴染みの薄いこれらのカクテルといえますが、もともとビタースやベルモットが傍にあって日常的に嗜まれる欧米においては、モヒートやハイボールなどと同様にポピュラーなカクテルだと…こう言いたいわけです。飲んでみてくだされ^^;)

 

…ともあれ、長く寒い冬の夜に、ブールバーディエ!

伊達男たちの、胸に秘めた人恋しさを感じさせる 粋なカクテルです。

 


- Bar Kirkwall - バー カークウォール
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New York Cocktail - ニューヨーク

  • 2016.11.27 Sunday
  • 02:14

 

その名前の如くNYCに由来するといわれる、クラシックで超スタンダードなカクテル。…なのですが最近、オーダーを頂く機会がめっきりと減ってしまったような気がします。ローカルな話でしょうか?素晴らしいカクテルなのに…

 

■New York Cocktail - ニューヨーク


・アメリカンブレンデッドウイスキー ……3/4
・ライムジュース ……………………………1/4
・グレナデンシロップ ………………………1/2tsp
・砂糖 …………………………………………1tsp

 

シェークして、カクテルグラスに注ぐ。

オレンジピールを絞りかける。


ベースのウイスキーは、ライウイスキーや、上記のアメリカンブレンデッド、もしくはカナディアンを指定するレシピが本流ですが、バーボンも一般的に使われています。近年は、アメリカのウイスキーにおけるライ麦への回帰の流れを受けて、新旧含めさまざまなライウイスキーを工夫して使うバーが増えてきました。私については、基本ライウイスキーの定番"オーバーホルト"か、近年話題の"ブレット"をベースに使っています。

 

レシピはきつそうですが、実は甘酸っぱく、さっぱりしていて飲み易いので、女性にもオススメ。氷を加えたロックスタイルや、クラッシュドアイスでカジュアルに楽しんでいただくのもアリだと思います。そろそろフルーツカクテルを卒業したいお兄さんには、更に真面目にお勧めします(笑)。これも、ウイスキーの楽しみ方を広げてくれるカクテルのひとつです。

 

Autumn in New York!

※落葉は、インスタバエの撮影用なので付属しません。ご安心下さい。

 


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Caruso - カルーソー

  • 2016.05.20 Friday
  • 02:14

 

19世紀末〜20世紀の初めにかけて活躍した、イタリアの伝説的オペラ歌手 "エンリコ・カルーソー"の名前に由来したカクテル。ちなみに"カルーソー"は英語読みで、出身のナポリ風に読めば"カルーゾ"となる。

 

■Caruso - カルーソー

ドライジン …………………1/2
ドライベルモット …………1/4
グリーン・ペパーミント …1/4

ミキシンググラスでステアして、カクテルグラスに注ぐ。

※『2001 The Suntory Cocktail Book』より


ナポリの貧民窟で機械工の息子として生まれ育った。母親は息子の才能を買い、なけなしの金を叩いて歌を習わせたという。1898年にミラノで「フェードラ」が初演されて成功を収め、世間の耳目を集めた。1903年のニューヨーク・メトロポリタン劇場での大成功と、併せて発売されたレコードによって世界的な知名度を確立していく。

並外れた声量と音域の広さ、そして声の美しさ。オペラだけでなく民謡からポピュラーソングまで膨大なレパートリー歌いこなし、20世紀初頭のレコード産業 台頭の波に乗って、またたく間に幅広い階層から愛される人気歌手となった。


かのトスカニーニも、現代オペラの発声唱法は、カルーソーによって確立されたと述べており、アカデミックな見地において、彼以前と以後ではテノールの価値観が全く異なるという。また、現在オペラのテノール歌手がこぞってナポリ民謡を歌うのはカルーソーの影響によるものといわれている。



Enrico Caruso (1873-1921)

さて、カクテルの"カルーソー"について。

マティーニにミントリキュールを加えてアレンジしたバリエーション。作者と製作年代は不明ですが、テーマも然ることながら、味わいも非常にクラシカルなショートカクテルといえます。アルコールの強さをベルモットが柔らかくまとめ、やや甘口ながら、ミントの爽やかさが口をさっぱりさせて後を引かない。"青いサンゴ礁"、"アラウンド ザ ワールド"、"アレキサンダーズ シスター"、"パリジャン"などをお好みの方には、さらにお薦め出来ると思います。

カルーソー自身は、時々喫煙はするものの、オペラ歌手として声帯を気遣い(少々のワインは除いて)多く酒を嗜まなかったといわれます。しかし、舞台の上で朗々とアリアを歌い上げるその姿を想像するとき、古色蒼然とし、かつ妖艶な、このカクテルの味と佇まいは、敬意をもって捧げるに、まさに相応しいカクテルのように感じます…


今宵、観客のひとりとしてバーの片隅で、今はもう見ることの叶わない伝説の歌手の姿を、このカクテルに重ねてみるのも悪くないかも知れません。

 


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Algonquin - アルゴンキン

  • 2016.04.14 Thursday
  • 02:14

 

正式名称は"アルゴンキン・カクテル(Algonquin Cocktail)"ですが、単に"アルゴンキン"とも呼ばれます。由来は不詳で、今もカナダの一部に居住する北米ネイティブアメリカンの名称からとも、N.Y.C.のタイムズスクエアにある老舗ホテル、アルゴンキンホテルが発祥ともいわれています。日本のバーではあまり作られないカクテルですが、著名なカクテルブックにも多く記載が見つかるので、それなりに歴史と知名度のあるスタンダードカクテルといえるかと思われます。
 

■Algonquin - アルゴンキン

アメリカンブレンデッドウイスキー …1/2
ドライベルモット ………………………1/4
パイナップルジュース …………………1/4

シェークして、カクテルグラスに注ぐ。

※『2001 The Suntory Cocktail Book』より


上記のレシピように、基本はアメリカンウイスキーをベースにしたショートカクテルですが、バーによってロックスタイルで提供したり、分量の多いロングとしても作られるようです。(比率は同じ、分量が増えるだけという恐ろしいアレンジ…)

じつは正直なところ、レシピ通りに作るとあまり美味しくないカクテルなのですが、材料や比率に多少の吟味をすると、意図の見える面白いカクテルになると思います。パイナップルの甘い香りがふわりと漂うなかに、ウイスキーが見せる新しい表情をお楽しみください。


手元にある北米の地図を開けば、トロントの奥に"アルゴンキン高原"なる地名が見つかりますが、もともと"アルゴンキン"とは、ヨーロッパ勢力の入植以前に、北アメリカに広く居住したアルゴンキン語を母語とする先住民族の総称ということです。かつては北米大陸の広範囲にわたって数十万の人口を数えたこの部族たちも、現在はわずか数千人がカナダの一部に居住するだけになっているといわれます。

冒頭に述べたアルゴンキンホテルが、何故この名前に肖ったのかは分かりませんが、詳しく紐解いてゆけば何かしら直接的な縁があるのかも知れません。ちなみに、このホテルは創業の1902年から、数多くの著名人たちが利用してきた老舗ホテルであると同時に、1930年代から代々その地位を受け継がれている名物の看板ネコ"マチルダ3世"や、現役最長老であり90才を超えた老バーテンダーが活躍している(た?)ことでも有名です(これは数年前の新聞記事で拝見しました)。


↑マチルダ3世
(※最近N.Y.の衛生条例により鎖で繋がれモメたらしい…)

さて、役に立たない蘊蓄をもう一つ。我々にも馴染みあるあのニューヨークの"マンハッタン(Manhattan)"ですが、実はもともとアルゴンキン語だったという事はご存知でしょうか?

こんな話があるそうです。

17世紀の初めのこと、開拓移民としてオランダから渡ってきた商人(植民地指揮官)が、当時ニューアムステルダム(現在のN.Y.)に住んでいた先住民族(アルゴンキン語族レナペ族)の酋長に酒を飲ませ、酔っぱらったところを見計らい、詐欺まがいの条件で土地の売買契約にサインさせてしまった。酔いがさめた酋長は、自分が騙されたことに気がつき、オランダ商人に詰めよって契約の無効を訴えたが、商人は相手にしなかったという。

「マンハッタン!マンハッタン!!」

アルゴンキン語で、マンハッタンは"泥酔"。つまり酋長は、泥酔していたのだから(無効である)と言いたいのだが、商人はそれを土地の名前だと思い込んで、書面の土地の名前にマンハッタンと書き込んだ…(そんなわけはないでしょう^^;)

※あくまで逸話です。またアルゴンキン語でマンハッタンは、"丘の多い島"という別の意味もあるらしいですね。言語学者でも、歴史学者でもありませんのであしからず。
 

- 以下、Wikipediaより引用 -

アルゴンキン語族(Algonquian languages)は、アメリカ・インディアンのアルゴンキン族によって話される語族である。アメリカ合衆国北部およびカナダの、ロッキー山脈から東海岸に至るまでの広い範囲で話されていた。共通の祖語から発展したと考えられており、祖語は(場所はわからないが)少なくとも3千年前に話されていたとされる。

この地域の地名はアルゴンキン語族によるものが多い:例としては、マサチューセッツ、コネチカット、イリノイ、ミシガン、ウィスコンシン、ミルウォーキー、シカゴ、オタワなどがある。
(※写真は1910年のレナペ族)

 


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Batanga - バタンガ

  • 2013.08.06 Tuesday
  • 08:15

いま酒類業界は、テキーラブームに沸いています。


もとよりラテン/ヒスパニック系の多いアメリカ西海岸では、テキーラが日常的に飲まれていました。カクテルにおいても、東海岸の"マティーニ"に対して、西海岸の"マルガリータ"といわれまして、当地で"マルガリータ"は、カクテルそのものを指す代名詞のように使われるそうです。

昨今、西海岸のイカし(れ☆)たセレブたちは、もっぱらお洒落なテキーラがお気に入りの模様。健康志向やオーガニックブームともリンクして、そのままで、カクテルで、時にワインのようにスワリングしながら嗜むようです。

最近ではジョージ・クルーニーやカルロス・サンタナなど、有名人がテキーラ業界に投資してブランドを立ち上げて話題になりました。日本においてもこの数年、かつては考えられなかった数の銘柄が輸入されるようになって来ています。

もちろんこのブームは、世界規模で仕掛けられている大がかりなビジネスといえますが、色々なお酒が楽しめるようになるという恩恵は素晴らしい賜物。美味しいモノが少なからずありますので、興味のある方はまずはトライして頂けたらと思います。飲み方なども含めてお気軽にご相談ください。

この熱帯化した日本で、新しい夏の愉しみになるといいなと思います。



では本題です。
先日、某テキーラのプロモーション紙を見ていたら、こんなカクテルがありました。

日本のバーでは今まで作ってこなかったカクテルです。将来性はまだ未知数ですが、これからカクテルブックなどにも載ることが増えてくるかも知れません。モテたい君は知っておきましょう!
(ただし2013年8月現在、一般的なバーで注文しても99%浮いてしまうだけと思います^^;)
 

■Batanga - バタンガ

テキーラ ………………60ml
ライムジュース ………30ml (1ヶ分)
コーラ …………………up

岩塩でスノースタイルにしたトールタンブラーにビルド。


要するに、俗称でいう"メキシコーラ"というやつなのですが、なんでも約50年前、本場のテキーラ町のバーマンが発案してメキシコ国内で大ヒットしたそうです。先程述べた、セレブたちのテキーラ☆ブームにもあやかって、現在はテキーラベースのカクテルとして海外でかなりの知名度があるようです。(なぜか毒のある書き方になってしまう… 失礼。)


テキーラ&コークとの違いは、塩とライムの酸味が引っ張るバランスでしょうか。
オリジナルの店"La Capilla cantina"では、アボガドや唐辛子を刻んだりしているナイフで混ぜるから美味いんだそうです…。

(ジジイのエキスが入ってますからね。こりゃ負けです。下のyoutubeをご覧ください。)


キューバリブレとラムコークの違いを考えるとき、材料が一緒でも、由来のある別称で呼ばれる処に意味があって、またその雰囲気が味わいを産み出すひとつの要素かもしれませんね。もちろん作り分けられるだけの説得力のある違いがあっての話と思いますが。

ちなみにこのバタンガですが、かつてTVの世界遺産で、竜舌蘭景観とテキーラの特集をやっていた際に登場しているようですが、私は残念ながら未確認です。ご覧になった記憶のある方は、どんな内容だったか教えて頂けると嬉しいです。
 

下記リンク先のページでは、発祥の町の風景とその酒場、
また、実際にカクテルを作っている発案者(ドン・ハビエル氏)の画像が確認できます。
http://www.saveur.com/article/Wine-and-Drink/The-Authentic-Batanga

そして、こちらは海外の現地取材番組。かなり詳しい情報が見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=ExRnxT1CAg8


しかし、メキシカンは酒豪です。こんなレシピで飲んでたら一発で逝ってしまいます^^;
わたくしが紳士淑女のためにお作りする一杯は、創作意図を汲み取りつつバランスをとって、ジャパニーズスタイルでご提供しますゆえ、安心してお召し上がり下さいませ。

 


 欠点は
 表面に浮かんで流れるワラのようなもの。
 真珠を求めるなら深く潜れ。

 - ジョン・ドライデン




 

Vin Chaud - ヴァンショー

  • 2012.12.20 Thursday
  • 06:35

ヴァンショー(vin chaud)とは、フランス語で"熱いワイン"の意味。つまり、日本人に馴染みのある言い回しに置き換えるとホットワインですね。最近すこし定着してきた感があり、いろんなジャンルのお店のメニューに"ヴァンショー"の文字を見かけるようになりました。

 

ホットワインは和製英語です。ちなみに、英語ではマルドワイン(mulled wine)、ドイツ語圏ではグリューヴァイン(Glühwein)、スカンジナビア諸国ではグロッグ(Gløgg)といわれます。ホットワインでも一応通じるでしょうけども。
 

 

ヨーロッパの寒い国では、冬場によく温めたワインを飲むそうです。特に収穫祭のマーケットや、クリスマスシーズンには欠かせない飲み物だと聞いています。そう、まさに日本でもいまのシーズンが飲み頃のお酒です。

 

歴史は非常に古く、中世に続く小氷河期(14世紀半ば〜19世紀半ば)のヨーロッパで特に広まったと考えられます。寒冷化した冬の厳しさをしのぐため、ワインを温めて人々は身体と心を癒す手段としました。

 

 

余談ですが、ぼくがこのカクテルに初めて出会ったのは、実は小説の中でした。エミリーブロンテの「嵐が丘」です。読んだことのある方も多いと思いますが、作中に、類似のあるカクテルが登場しています。今となってはそれがどんな飲み物なのかすぐにわかりますが、当時は、周りの大人にしつこく聞いて回ったものでした(…結局誰も分からず、図書館通いが始まる^^;)。他にも、おなじくブロンテ姉妹の小説をはじめ、同時代のほかの作品等々の中に描かれることも多く、いかに人々に愛され、日常的に親しまれていたものであるかが分かります。

 

このカクテルの良いところは、なんといっても決まったレシピがなく、どこでも簡単に作れてしまうところ。ワインを温めるだけです。好みの果実やスパイスを加えれば、自分だけのオリジナル・ヴァンショーができあがり。スペインバルの隆盛で、少し前から流行っているサングリアと一緒です。ワイン(飲みやすい)+フルーツ(かわいい)+甘い(キャー)+(なんか)ヘルシー=女子に受ける。女性はメンズにホットワインを作ってもらうのが夢だと、このあいだNHKの番組でやってました。

 

 

…モテるかどうかは保障いたしかねますが、知っておいて損はないかもしれませんよ。あなたのそれが真心ならば、温もりはきっと伝わるはずです。とてもあったまる素朴な味ですから。

 


 


★赤★
ボルドースタイルのワインに
ジャムや、シナモン、クローブなどのスパイスを加えて。
好みで少しブランデーなどを加えても美味しい。


☆白☆
アルザス地方etc.では白のヴァンショーも有名。
こちらは蜂蜜、レモン、シナモン、クローブなど。
香りの良いホットレモネードのよう。

 


※ご注文が重なると

 お時間をいただきますが、そこはご愛嬌で^^;


added on Jan.4 2018

Isla de Pinos - イスラデピノス

  • 2012.08.22 Wednesday
  • 08:00

※前注
…書いてるうちに大仰になってしまいました。
サラッと流してお読みください。

知ってて得なことは、たいして書いてありませんので悪しからず…。




"Isla de pinos" これはスペイン語です。
英語でいうと "Isle of pine" つまり…。

(右写真 - ASAHIカクテルガイドより)

お酒に興味を持ち始めたころ、諸先輩方に勧められて読み始めた本のうちで、とりわけ参考にしていた本があります。いつも傍らに持ち歩くうちに、表紙は擦り切れて消滅しました。ページがボロボロにヘタるまで読みこみ、いつでも諳んじられるように呪文のごとく暗唱しました。比喩ではなく何度買い直したか分かりません。うち何度かは泥酔による紛失ですが…^^;

いま読み返してみると、分野ごとに掘り下げようとするに物足りなさも感じますが、幅広く体系的にお酒の概要をまとめた"教養書"としても充分に楽しめる本で、勿論この仕事に携わる者にとっては基礎となる知識が満載。正式な資格のないバー業界においては”教科書”といってもよい存在の本だったと思います。

そのなかに記載されていたカクテルが、イスラデピノス (isla de pinos) です。
スタンダードとしての認知度は今イチですが、ラムベースのさっぱりとしたロングで、女性が気に入りそうな、色の綺麗なカクテルとして知っていると往々して重宝します。


本には、レシピと一緒にカクテルの説明がありました。

材料
ホワイト・ラム……………………45ml
グレープフルーツ・ジュース……45ml
砂糖…………………………………1tsp.
グレナデン・シロップ……………1tsp.

作り方 ●シェークして、氷を入れたワイングラスに注ぐ。
メモ ●1970年代後半のトロピカルカクテルブーム時代に日本へ紹介された。
マイタイなどと違い、グレープフルーツジュースの苦みが、現代人にマッチする味わいだ。
●カクテル名はスペイン語。英語でいうならアイルオブパイン、
つまりパイナップルの島の意味。


作ってお出ししてはいるものの、ひとつ明瞭としないことありました。

バーテンダー「パイナップル島という意味だそうです。」
お客さん 「パイナップル島なのにパイナップル使ってないんだね。」
バーテンダー「……。」

お客さん 「なんでグレープフルーツなんだろ?」
バーテンダー「……トロピカルなイメージとしてのパイナップル島って名前なのでは……。」

お客さん 「……そうなんだ。」


ところで、この本ですが、昨年2011年に二度目の改訂をほどこされ、現在はリニューアルされた新版として販売されています。前回の改訂から16年を経て、時代の変化に対応すべく"マニュアル本としての範疇のなかで、できる限り新しい情報を追加執筆"して刊行されました。(""内、著者代表まえがきから引用)


こちらが、そのレシピと説明です。

材料
ホワイト・ラム……………………45ml
グレープフルーツ・ジュース……45ml
砂糖…………………………………1tsp.
グレナデン・シロップ……………1tsp.

作り方 ●シェークして、氷を入れたワイングラスに注ぐ。
メモ ●1970年代後半のトロピカルカクテルブーム時代に日本へ紹介された。
マイタイなどと違い、グレープフルーツジュースの苦みが、現代人にマッチする味わいだ。
●カクテル名はスペイン語。英語でいうならアイルオブパイン、
つまり松の生い茂る島の意味。


…シレっと修正してありますね^^;
旧版のほうは、"pine"をパイナップルと勘違いしてたってことでしょうか??

※注 "パイナップル(pine-apple)"は、形が松かさに似ていることからそう呼ばれる。
   "pine"はそのままだと一般的には"松"の意味。
   ちなみにヨーロッパでは、パイナップルは"アナナス(ananas)"と呼ばれる。


今回の改訂で"pine=松"という単語そのままの意味から、とりあえず松の生い茂る島に訂正しておいたってことなのでしょうか??


いずれにしてもよく分かりません。

若手バーテンダー「松の生い茂る島という意味だそうです。」
中堅バーテンダー「……。」

お客さん 「パイナップル島じゃなかったっけ?」
若手バーテンダー「松の島です……。」

お客さん 「なんで松の島なの?」
若手バーテンダー「本にそう書いてありました…。」
お客さん 「……。」

中堅バーテンダー「……まぁいろんな説があるでしょうから。」
お客さん 「……そうなんだ。」


歴史が比較的浅いこと、そもそも創作者や由来に不明な点が多く、資料がない場合も多いことを考えれば、時代時代で解釈が変わるのは仕方のないことかも知れません。また翻っていえば、時代のなかで常に変化していく、その自由と気楽さこそがカクテルの魅力でもあるともいえるかも知れません。

…んがしかし、しかしです。
業界においてスタンダードの立場であろうともいえる著作で、それはいかがなものでしょう。個人的な心情ですが、せめて過去の記述を残したうえで訂正の記載をすべきではなかったでしょうか。はっきりしないことは諸説を併記するなり、確証がない場合は、ある程度その出典を明らかにした記載をする。信頼できる著作とはそういうものだと思います。

読んでる末端のバーテンダーは、適当な気分でお客さんに向き合ってるつもりはありません(…たぶん)。少なくとも自分の顧客に話す内容に責任を感じています。嫌な言い方になりますが、著作陣は自分の読者に対して一体どんな責任を感じているのでしょう?

たかだかカクテル。しょせんイスラデピノスかも知れません。
けれども、この改訂にあたって、他にもこうした不明瞭な記述が目に留まることが多く、小生意気ではありますが、良書であると信じて購入している愛読者のひとりとして、とても忍びなく思うのです。

…しかし、がしかしです。
さらに翻って考えるならば、本に書いてあることは、あくまで一つの見解であり、そこからがスタートであるともいえます。さらなる研究や考察は、読書をきっかけにして読んだ人間のそれからに付託されるのかも知れません。

書物を非難するよりは、いままで疑問を追求してこなかった自分の怠惰を非難すべきかも知れません。



さて、本題です。

先日、キューバの地図を眺めていたら、ひとつ収穫がありました。ずっと曖昧だった”イスラデピノスの由来"について、解決の糸口になるかも知れない自分なりの発見がありました。

…こんな名前の島があります。

”青年の島 - Isla de La Juventud”(↓赤)


ハバナのほぼ真南に位置する、カナレオス諸島にある人口約10万人ほどの島で、キューバ政府によって直轄統治されています。島全体に松(=pinos)が生息するこの島は、かつてピノス島 (Isla de pinos)と呼ばれていました。

島の土壌は、国の主幹作物であるサトウキビの生育に全く適しませんでした。キューバ全土のいたる所で見ることのできるサトウキビ畑ですが、この島では全くみることがないそうです。代わりにこの土壌に適したのが柑橘類。現在、島に降り立てば、国営のオレンジやレモン畑の農場がどこまでも続く景色が見られるといいます。

米西戦争以降、USAとの間で長く領土問題の係争下にあったピノス島が、キューバに正式に帰属したのが1925年。しかし、その後も革命が起こる1959年までは、その他キューバ全土と同じく、ほとんどの土地をアメリカ人によって所有されていました。

「1930年のデータによると島に1200以上あった農場の900以上がアメリカ人の所有であったと言う。だからアメリカンスクールも存在したし、アメリカ人の墓地も残っている。今でも残るアメリカ人地主の家は、アメリカ南部のニューオーリンズあたりにありそうな南部スタイルのアメリカンカントリーハウス。当時その農場はグレープフルーツの樹がどこまでも続いていた。」
(現地在住の方のblogから引用。不都合があれば削除しますご連絡ください。)


キューバにアメリカンカルチャーが広がっていた時代、特産のラムとグレープフルーツを併せ、一杯の酒をあつらえた人(たち)が、その産地である"島の名前"にあやかって名付けたのが、カクテル"イスラデピノス"の由来なのかもしれません。裏をとるためには、詳細に海外の資料や、当時のカクテルブックも参照してみないといけませんが。


1978年にピノス島は、青年の島と改名されました。これはアフリカをはじめとする、非先進国から多くの留学生をあつめてカレッジアイランドにするという政府の方針によるものだそうです。トロピカルカクテルのブームに乗って日本に紹介されたちょうどその頃に、島の名前が変わってしまったということが、このカクテルの名前の由来を曖昧にしてしまった一因なのかもしれません。

現地の年配のかたの多くは、いまでもこの島をピノス島(Isla de pinos)と呼んでいるそうです。


バーテンダー 「……確証はありませんけど。」

お客さん 「キューバの島の名前からね……。」
バーテンダー 「戦前までは、日本からも移民した方が沢山いたそうですよ。」

お客さん 「……どんな島かな。」
バーテンダー 「……いつか行ってみたいですね。」

お客さん 「せっかく作ってるんならね。」
 
※後注
文中の本について。

著作陣に敬意を払い、書名は臥せました。
悪意のある記述ではありません。これも悪しからず…。
 

Blue Beard's Wench - ブルービアーズ・ウェンチ

  • 2011.06.07 Tuesday
  • 07:18
ことによると昔、絵本などで読んだ記憶がございましょうか。赤ずきんちゃんやシンデレラなどと同様に、民間伝承から題材を得てつくられた、シャルル・ペローの童話のなかのひとつに『青ひげ』(仏: La Barbe Bleue)というものがあります。
 
 大金持ちだが、青い髭を生やしたその風貌から、
 どんな娘も恐れて近寄らない青ひげ。

 青ひげは、ある兄妹の美人の妹に求婚し、
 その娘と結婚することになった。

 あるとき青ひげは外出に際して、
 新妻に屋敷の鍵束を渡し、

「どこにでも入っていいが、
 金の鍵の部屋にだけは絶対に入ってはいけない」
 と言いつけて出かけていく。

しかし、新妻は好奇心から戒めをやぶって「金の鍵の部屋」を開け、
その中にある青髭の秘密を見てしまう…。

興味のあるかたは、いちど読んでみてください。
(※お店にもありますよ)


さて、手元に確実な資料が見当たらないので、推測にはなるのですが、おそらくこの『青ひげ』をモチーフに創作されたのであろうカクテルがあります。
 

■Blue Beard's Wench - ブルービアーズ・ウェンチ

ホワイトラム ………………20ml
ホワイトキュラソー ………20ml
ブルーキュラソー …………20ml
レモンジュース ……………15ml
ソーダ ………………………適量

ソーダ以外の材料をシェイクしてゴブレットに注ぎ氷を加える。
ソーダを満たし軽くステア。レッドチェリーを飾る。


Blue Beard'sが「青ひげの」Wenchは古い言葉で「娘っこ」とでもいった意味になるようです。炭酸の浮き上がる青い液体にたゆたう赤いチェリーは、いうまでもなく青ひげに嫁いでいった娘の危うき運命をあらわしているのでしょう…。おおこわい。


2009年公開のフランス映画版。
監督・脚本/カトリーヌ・ブレイヤ 

Hot battered Rum - ホット・バタード・ラム

  • 2010.12.04 Saturday
  • 07:34
本格的に寒くなってきました。温かい飲み物が恋しい季節です。寒い夜にあなたを温めてくれるお酒をご紹介しましょう。
 

■Hot Battered Rum - ホット・バタード・ラム

ダークラム ……45ml
角砂糖 …………1個
バター …………1片(角砂糖大)
熱湯 ……………適量

温めたタンブラーに角砂糖を入れて少量の熱湯で溶かし、ラムを注いで、熱湯で満たし、軽くステアする。
バターを浮かべ、ロングスプーンを添える。好みでグローブ3〜4粒を浮かべる。
(※NBA オフィシャル・カクテルブック レシピより)


ラムはサトウキビの蒸留酒です。カリブ海に位置する西インド諸島で、蒸留技術を持ち込んだイギリス人によって生まれました。南国のファッショナブルなイメージのあるお酒ですが、その歴史は古く、17世紀には既に作られています。

いわゆる三角貿易(アフリカ黒人奴隷とサトウキビ生産、ラム製造を循環させて巨万の利益を産んだ植民地政策)によって世界的なお酒へと発展し、バーボンウイスキーが登場する以前(17〜18世紀)のアメリカでは、もっぱら蒸留酒といえばラムが飲まれていました。もちろん寒い冬には、ホットカクテルとして飲まれていたことでしょう。

私たちが、焼酎をお湯割りで飲んだり日本酒を燗して楽しむように、当然、洋酒も温めて飲むことに吝かではありません。特に中世のヨーロッパでは冬季の寒冷化が起こり、冬の間は飲み物を温めて飲む習慣が普及したといわれます。

イギリス人は、ラムのお湯割りにバターを加え、古くからこれにクローブやシナモン、ナツメグといったスパイスを足して楽しんだそうです。ワインやビールに何かを加えて飲むスタイルは、紀元前から西洋にありました。植民地支配したインドから持ち帰った東洋のスパイスをイギリス人がそこに加えるようになったのは自然の流れかも知れません。

毎年、バターと各種スパイスを使って仕込み、冬場の間のみご提供しています。

濃厚でまろやかな味です。欧米では「風邪の妙薬」として家庭などで飲まれる、卵酒のようなカクテルで、X'masにも振舞われるそうです。ちなみに温めたミルクで作ると"ホット・バタード・ラム・カウ"となります。"cow"つまり、"乳牛"ですね。

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