ハイランドパーク "ヴァルキリー"

  • 2018.05.19 Saturday
  • 02:14

HIGHLAND PARK “VALKYRIE”
Official Bottling
45.9%

ダークオリジンの終売を受けて、市場に投入されたNAS(ノンビンテージ表示)の新シリーズである”ヴァイキング・レジェンド“。今後さらに2つのボトルが発表される予定である、その第一弾が”ヴァルキリー”です。

 

ヴァルキリーは「ワルキューレ」の呼び方が日本では馴染みがあるかと思います。北欧主神であるオーディンに仕え、天馬に乗って戦場を駆け、戦死した勇士をヴァルハラへと迎えもてなす女官的な存在といわれます。古来北欧において、オーロラは、夜空を駆ける彼女たちの鎧が煌めいているのだと信じられました。

 

原酒は、アメリカンオークのシェリー樽とバーボン樽をバッティング。ヴァイキングを先祖にもち、曽祖父がオークニー初の伯爵という、デザイナーJim Lyigvild氏がパートナーとなって、シリーズのコンセプトを企画しているようです。評判の良かったダークオリジンの跡を継ぐNASラインの定番アイテム。日常的に楽しめる質の良いボトリングを期待したいものです。

 

※補記
開封時のテイスティングノート。
チョコレート、バニラ、ジンジャー、赤いリンゴ、燻るスモークと暖かくスパイシーな余韻。樽やニューポットの不快なニュアンスは少ない。近年のハイランドパークとしては比較的短時間で開き、香りの本体が現れる。揮発する香りに乗ると、イキイキとしたリンゴと、バニラウェハースが踊る。ヒース、アーシーで湿った土塊のニュアンス。焚火の余韻。

 


Bar Kirkwall - バーカークウォール
広島市中区流川町2-22 インペリアル1st 2F
082-249-2140
www.barkirkwall.com
18:00〜4:00 Last Entry 3:00 - 不定休 -


 

ダルユーイン21年(KINTRA シングルカスクコレクション)

  • 2018.04.22 Sunday
  • 02:14

DAILUAINE 21yo(1992)
Kintra “Single Cask Collection”
48.9%

どうでもいい話ながら、姉妹蒸留所の”インペリアル”と合わせて(個人的に)好きな蒸溜所5位にランクしている”ダルユーイン”。スペイサイドのカロン村にある、ジョニーウォーカーの中核となる蒸溜所です。

 

加えてどうでもいい話ですが、”ダルユーイン”はカタカナ日本語での通名。本来ならば、”ダルウェイン”が正式な発音に近い呼び方になるようです。どうせ読めないならば、日本人もスコットランドに気軽に旅する昨今、紛らわしいので”ダルウェイン”に修正したらいいのにと、ちょっとだけ思います。

 

こちらは、国内での流通量は少ないものの、ここ数年に渡って興味をそそるアイテムを提供してくれる、オランダのボトラー”キントラ”がリリースしたシングルカスク。バーボンのバレルで熟成され、21年の熟成中に樽内で自然に48.9%まで度数が下がっていて、凝縮された、しかしバランスの良い味わいが楽しめました。開封の翌日から早々に開き始め、数日後には本格的な覚醒を見ます。約1年4カ月で天に召されましたが、最後まで衰えない心地よさに酔える素晴らしいボトルでした。ともあれ、ありがとう。

 

※補記

最後の一杯、テイスティングノート。
麦わらに輝く、淡いゴールド。まず開いた豊かな樽香。最後の一杯まで消えない植物性のミンティでグラッシーなニュアンスを追い抜き、豊満な甘い香りの束が溢れている。蜂蜜、もみ殻、たわわに色づいた黄色いフルーツと、ミルクキャラメル、アーモンドオイル、微かなスモーク。様々な表情が現れては隠れを繰り返し、決して飽きさせない。ダルユーインらしい、暖かいがドライなスパイスが舌の上で広がり収斂していく。ボリュームはうるさ過ぎず、程よい落ち着きがあり、余韻は暖かくとても長い。郷愁を覚える風景、収穫の時期、広がる畑に沈む夕日。お祖母ちゃんに貰った干した果物やお菓子の記憶。それが何だったのか思い出せないが、ただひどく懐かしく愛おしい。

 


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ストラスアイラ19年(ケイデンヘッド スモールバッチ)

  • 2018.02.20 Tuesday
  • 02:14

STRATHISLA 19yo(1991)
Cadenhead’s Small Batch
56.6%

キース地区の筆頭を誇るストラスアイラ。ケイデンヘッドから日本向けにリリースされたこの人気蒸溜所のボトル、残念ながら開封時には、薄く溶剤系の香りが漂う、硬いばかりで、あまり良い印象を持てないボトルでした…。がしかし、数ヶ月の放置プレイwを経て、瓶内で驚くほどの変化を見せ始めます。


一般的なストラスアイラのスタイルとはやや異なり、どちらかといえば、スペイサイド北部沿岸一帯のドライな麦のニュアンスが基軸かと思います。硬いミネラルの奥から、リンゴやバニラ、バター飴やカスタード、フローラルな蓮華の蜜が湧き上がり、パレートには樽由来のスパイシーで暖かい甘さが心地よく広がりますが、あくまで清潔でドライな余韻が、ごく微かなスモーキーさ伴って綺麗に伸びていきます。春へと向かう、まだ耕す前の畑一面に生えたレンゲや、菜の花の揺れる北国の風景を想わせ、長閑ではあれど、その中に厳しさと可憐な印象を残しました。


蒸留酒におけるこうした変化は、熟成というよりは、ボトル開栓後に瓶のなかで液体が空気に触れる過程でゆっくりと開き、本来の姿を現してゆく事例としてよくあることですが、特に、このボトルの開花っぷりには目を見張るものがあって、記憶に残る一本でした。一度飲んだだけではその本質を全く理解し得ないところにも、またウイスキーの面白さがあります。就中、前もってブレンドの工程を経ていないシングルカスクや、小ロットのスモールバッチに於いては、その振れ幅にダイナミックな変化を見せるものが多く飽きさせません。ともあれ、ウイスキーという不思議な液体の奥深さを再確認させてくれる、素晴らしいボトルでした。ありがとう。

 


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クレイゲラヒ20年(BB&R ベリーズオウンセレクション)

  • 2017.10.29 Sunday
  • 02:14

CRAIGELLACHIE 20yo(1991)
Berry Bros.& Rudd
55.8%

どうでもいい話ながら、過去10数年にわたり(個人的に)好きな蒸溜所No.4という好位置をキープし続けるクレイゲラヒ。近年では、世間的に高評価を得るボトリングが数本ばかり続き、業界での引き合いが急増。根っからのファンとしては嬉しいかな哀しいかな…ちょっと複雑なところ^^;

 

型破りな創業者さまwの性格を写したかのように、非常に気難しいお酒で、シングルカスクでのバリエーションには、伸るか反るかの相反するものが混在します。抽象的な物言いですが(極端にいえば、一本のボトルのなかにも) "中吉" と "凶" の要素が同居しているようなところがあり、こういう捻くれた所が、個人的にまた好きな理由のひとつなのです。

 

少し前のリリースですが、コスパも良く、素晴らしい仕上がりを感じさせたボトルが、先日、安らかに天に召されました。開封した時点から、前述したところでいう "中吉" の部分が前面によく発揮された、どちらかといえば素直な、とても佳いボトリングでした。ともあれ、ありがとう。

 

※補記

最後の一杯、テイスティングノート。
少しミンティなトップから、青リンゴやメロンなどワクシーなフルーツ。ハーブ入りの焼き立てブレッドを編みかごに入れ、若草萌える雨上がりの田舎道を、白い洋服を着た女性が歩いていく。イーストの香り。町で評判のパン屋。幸福そうに見える女性。その頬をひとすじ涙がつたっている。中熟のクレイゲラヒらしいクラッシィな品格。甘い蜜や、麦のニュアンスを残しつつ、余韻の長いドライなフィニッシュ。

 


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グレントファース35年(TWA スティルライフ)

  • 2017.01.25 Wednesday
  • 02:14

どうでもいい話ですが、現在(個人的に)好きな蒸溜所No.2に君臨するグレントファース。TWAのスティルライフ'75は、その素晴らしさを教えてくれたボトルのひとつでした。

Glentauchers 35years (1975)
The Whisky Agency "Still Life"
47.3%

G&Mを除き、当時まだシングルモルトのリリースが皆無に近かったトファース。名前も知らなければ、まず読めない方が殆どでした。ロイヤルハウスホールドの中核となる原酒といえばなんとなく通りましたが…。いまでは認知度もかなり昂まったはずですw

 

ブキャナンの魂を分け合ったコンバルモア。それを継承する桃やメロンの甘いワクシーな芳香。杏子、南国の花、ハチミツ、バニラ、バナナ、蜜蝋、埃を被ったアンティーク。長熟ゆえに樽香が幾許か勝ちすぎな感はありますが、穏やかに長く広がる、品格ある余韻にはうっとりさせるものがあります。

 

'80s後半の閉鎖を乗り越え、現在リリースされるボトルは、再開('89)よりあとの原酒がほとんどになってしまいました。しかし、そのスタイルを伝える今の姿を味わう折々、確かにウイスキーの未来を期待させる明るい希望を感じることができるように思います。ともあれ、ありがとう。

 


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ザ・デヴェロン12年

  • 2016.04.20 Wednesday
  • 02:14


The DEVERON 12years
Official Bottling
40%

バカルディ社の"ラスト・グレートモルト"から、近年リニューアルリリースされたグレンデヴェロン(マクダフ蒸留所)。この頃のお気に入りで、自宅でウイスキーを飲むときは、もっぱらこれを愛飲させていただきます。

 

甘いバニラ香と、蜜の入った林檎に、心地よい麦の風味…。穏やかに晴れた春の日、古びた船舶がのどかに行き交う北の海から運ばれてくる、遠い波の音に混ざった、ほのかな潮の香りを連想させる、素朴で美味なウイスキー(…書けと仰せならばこんなのも書けますよw)。

 

マーケット全体が価格高騰の渦の中ではありますが、モルト(スコッチ)のオフィシャルスタンダードについては、かつての良さを取り戻しつつある蒸留所が多く見受けられます。定番が手頃に美味しく飲めることが、まず大事なことだと思います。
 


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クレイゲラヒ13年

  • 2016.04.14 Thursday
  • 02:14

CRAIGELLACHIE 13years
Official Bottling
46%

バカルディ社からリリースされたオフィシャルのクレイゲラヒ。オーナーが変わって以降、度重なる苦難の変遷を経て、ラストグレートモルツ・コレクションとして根底からリニューアルされました。今後は、王道への道をしっかりと歩むことと信じます。

 

麦のハーバルな甘さ、林檎、バニラ、グローヴ、硫黄のほのかなアクセント…。せつないほど繊細で、ちょっと気難しい、いなせな男のウイスキー。酒を飲むなら、この美味しさが理解できなければダメです。…スペイサイドの真髄はまさにこの蒸留所にある。

 


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Xmas と Whisky。

  • 2012.12.24 Monday
  • 08:39

クリスマスの今夜は、ウイスキーにまつわる話をひとつ。

 


時は、19世紀の半ば。

英国はスコットランドの東北部にある、ダフタウンという小さな街が舞台です。

 


この街で仕立て屋を営む、グラント家のひとり息子、ウィリアム君。7歳から牛の見張りをして貧しい家計を助ける、やさしく素直な男の子でした。

成人すると彼は、家の近所にある蒸留所に簿記係として仕事を得ますが、そこでウイスキーの深い虜となります。


「この谷で一番のウイスキーを作りたい。」


家業を継ぐことよりも、ウイスキーの業界で身を立てることを強く望んだ彼は、ひとりの修理工見習いとして、その世界に飛び込みました。

日夜、仕事に追われるかたわら、蒸留技術を目で盗み、経営を学び、寝る間を惜しんで努力を重ねます。すでに結婚して、なんと10人の子どもを抱え、決して生活は楽なものではありませんでした。

しかし、家族全員の協力をえて、コツコツと金を貯め、およそ20年の後、ついに自分たちの手で蒸留所を作り上げたといいます。


時に1886年。今から約125年前のことでした。



釜などの設備は、余所のお下がりで中古品。お世辞にも恵まれているとはいえない、非常に慎ましやかなものです。けれど、念願の蒸留所をもったウイリアム家はきっと、自分たちの新しい家業を良いものにしようと、幸福な生き甲斐を得たことだと思います。

成長した8人の息子と2人の娘たちは、それぞれが家族ぐるみで父親の仕事をよく助けたといいます。たとえば、娘婿はセールスを担当しました。イギリス中の酒屋やレストランをまわって1ケースしか売れない時代もあったそうです。

2度に渡る世界大戦や、アメリカの禁酒法の荒波。その時々で、大きな苦労はありましたが、一族が力を合わせて大切に事業を大きくしていきます。時に大胆なチャレンジを試みながら成長を果たし、大きな成功と繁栄をつかみ取りました。

ウィリアムとその家族が作り上げた蒸留所で生産されるこのウイスキーは、現在、シングルモルトとして業界No.1のシェアを誇っています。

 


「この谷で一番のウイスキーを作りたい。」

 

 


ウイリアムの蒸留所は
現在、創業者の彼から数えて
ひ孫にあたる4代目。

ダフタウンの町にある
グレンフィディック蒸留所は

 

世界的に統廃合の激しい

酒類業界にあって

 

いまも変わらず、家族経営を守り続けています。
 


イギリスらしいお話ですね。こちらは、今の街の風景です。

 


ウイリアムと家族の苦労がみのり

念願の独立が叶ったその翌冬。

 

古ぼけた蒸留釜から
初めてのウイスキーが滴り落ち、

流れ始めました。


西暦1887年 12月25日。
クリスマスの朝のことだったといわれています。

 


レベッカ10年 - Rebecca

  • 2012.12.19 Wednesday
  • 06:15

ヘブンヒル系のバーボンにして、その硬派な特性に沿いながらも、柔らかく女性的な味わいを感じさせてくれるロマンチックな酒 "レベッカ"。


その名前は、イギリスの女流作家ダフネ・デュ・モーリアの小説『レベッカ』(1938年) から命名されたといわれています。『レベッカ』はデュ・モーリアの初期の作品で、ゴシックの雰囲気が漂うサスペンスの名作。


発表の翌年には、アルフレッド・ヒッチコックによって映画化もされました。
(※ちなみに、有名な『鳥』(1963年)もデュ・モーリア原作)




 なぜ英国の小説がバーボンの酒名に?
 とお考えになるかも知れません。




デュ・モーリアと同じく、ヒッチコックもイギリス出身です。では尚更…。と思いますが、実はイギリス国内ですでに活躍していたヒッチコックが、ハリウッド進出のため第一作として選んだのが、デュ・モーリアの小説『レベッカ』でした。

『レベッカ』はヒッチコックが、アメリカ資本で制作公開した最初の作品(1940年)という事になります。アカデミー賞にもノミネートされ、受賞は逃したもののハリウッドで高い評価をうけ、アメリカ国内はもとより世界中で多くのファンを獲得した作品でした。(※日本では大戦の影響もあって1951年に公開)




 素晴らしいクオリティ。
 いま観ても充分楽しめる作品です。


ということで、オリジナルの小説もさることながら、ヒッチコックのハリウッド映画によって、『レベッカ』はアメリカ人に馴染み深い存在なのかもしれません。この辺りの事情が、バーボンの酒名に選ばれた背景のひとつになっているのかも知れませんね。あくまで推測以外の何物でもありませんが。


余談ですが…。
この酒をバックバーに見つけた特定の年代のお客さまが、ほぼ必ずと言っていいほど口ずさむのが…

「フレンズ」
しかしながら、NOKKOさんのバンド "レベッカ" は、アメリカの児童文学作家ケイト・ダグラス・ウィギン(1856-1923)の著作『少女レベッカ』(原題:Rebecca of Sunnybrook Farm)から命名されているそうなので、バーボン・レベッカとは無関係。ただし、ファンの間では別の説として、ヒッチコックの映画『レベッカ』から採用したのだ!という話もあって、正直よく分かりません。名付けたのはNOKKOではなく、バンドを立ち上げた木暮武彦氏(のちRED WARRIORS)。ご本人に確認するしかありませんね。どなたか真相をご存知の方がいれば、教えてください。



…数年前から終売の噂話が付いて回っている酒ですが、味といい、コンセプトといい、素敵なバーボンだと思います。こういうお酒には残って欲しいものですね。
 

※レベッカ(Wikipediaより引用)

レベッカは、ヘブライ語の女性名ヘブライ語: רבקה‎(リベカ)の、ヨーロッパ諸言語形。

旧約聖書にもイサクの妻、ヤコブとエサウの母親の名前として登場しており、うっとりさせる者、魅惑する者、束縛する者という意味がある。

英語では Rebecca や Rebekah、ドイツ語では Rebekka、フランス語では Rébecca などと綴る。英語のレベッカの愛称はベッキー (Becky) 。
 

ハバナクラブ15年 - Havana Club

  • 2012.06.08 Friday
  • 07:34


"Ron Havana Club 15y"

ハバナクラブは、100年以上の歴史を持つキューバ産ラムの代表銘柄。革命後の経済統制で、ひとときはキューバが輸出する唯一の銘柄であったこともあります。

現在、そのハバナクラブの最高レンジに位置するのが"15年"(その他、限定品ではカストロに肖るスペシャルデキャンタ"Maximo"などがある)。かつて日本でも見かけた時期があるとは聞き及びますが、長きに渡ってその流通はキューバ本国だけに限られ、日本の洋酒好きの間では、まさに存在がマボロシの扱いを受けていました。




キューバという国は、不思議な国です。

遠く地球の裏側にある日本からみると、ぼんやりと音楽やスポーツが盛んな、レトロでのんびりとした国といった印象があります。お互いの利害関係が少ないぶん、この両国の間には友好的な関係が築けているようですが、広く世界を俯瞰的にみれば、西洋文明による発見と入植以降、その地理的条件からも頻繁に争乱の渦中にあり、戦いに明け暮れ、時代のうねりに翻弄されてきた国といえます。



現在も一党独裁の社会主義国家であり、アメリカからは経済制裁を受け続けている。とても危ういバランスの上に成り立ち、独特の文化を育んでいる国ともいえるでしょう。政治体制に触れるつもりがありませんので、その詳しい歴史的な事情や背景の説明は省きます。ただ、大まかな近現代史をさらっと眺めて、そこに重ねてみるだけでも、国際事情によって、お酒がいろいろな影響を受けてきたのだということがよく分かります。


1959年のキューバ革命で、土地や産業が国有化されました。糖蜜生産(即ち、ラム酒生産)も国有化され、西側諸国の大手メーカーはカリブ海諸国やアメリカ本土に拠点を移しました。

以降、キューバにおける酒類は、統制経済の下で生産管理され、外貨の獲得資源として政府のコントロールに従って輸出されるようになります。冒頭に述べたように、1960年以降、キューバ政府によってハバナクラブが唯一の輸出銘柄にしぼられたのはこのためです。非合理的ではある半面、生産が資本主義経済の原理に拠らないので、今に至るまで、キューバンラムがクオリティーに昔ながらの風格を残していることは、ここに大きな要因があるとも考えられます。


キューバ革命に際し、当時のハバナクラブの製造会社も例に漏れず新政府によって国有化されました。ブランドの創業家であるアレチャバラ家はスペインに亡命。のちにアメリカでハバナクラブの商標を登録し、同じくプエルトリコに逃れていたバカルディ社に委託して、アメリカ国内に限ってハバナクラブ銘のラムを製造販売していました。
(※1973年に商標権を失効。以降キューバ政府公団によって正式な商標権が獲得される。)


さて、もろもろを経て大きな変化が起こり始めたのが、ソ連崩壊後の90年代です。後ろ盾を失ったキューバが深刻な経済不況に落ちいるごとに、経済優先の政策が漸次とられてきましたが、面白いことに(というか当然のことですが)、経済の開放が進むに比例して、キューバから輸出される酒類の銘柄にも大きな変化が現れてきます。1994年には、キューバ政府はさらなる展開を視野に、フランスを拠点とする世界的な巨大資本ペルノリカールと手を組み、50/50の合資会社ハバナクラブ・インターナショナルを設立。ハバナクラブは現在、年間380万ケース、世界180ヵ国以上に輸出される国際的ブランドに成長しています。


そして昨年、2011年には、かつてない大規模な市場経済の導入が決定されており、今後、数年以内に具体的な開放改革が実施されていくと先ごろ発表がなされたのは、ニュース等で既に皆さまご存じかと思います。こうした状況を鑑みた時、昨年末頃から、かつては入手が非常に困難だった"15年"が、並行輸入業者を介して極少量とはいえ日本に入ってきていることに、少なからずこの変化が影響を及ぼしているのかも知れません。



また余談ですが、
今後の生産の合理化や経済の開放とともに、ラムや、これもキューバの代表的な生産品であるシガーの品目品質にも大きな変化が表れる可能性が高いと思われます。

以前、来店されたアメリカのお客さまが、棚にあるハバナクラブを見てとても珍しがられていたことがあります。伺えば彼らの国では殆ど目にすることがないといいます。
(実際のところ住んだ経験がないのでわかりませんが…)

仮に、いつか遠くない将来、米国との経済交流が正式に開かれることになれば、こうした品が大量にアメリカに流れ始めることになり、キューバも、その文化も、いわゆる本格的なグローバリゼーションの流れの中に組込まれることになる…。いずれにしても、この流れは避けがたく止められないように思えてしまいます。


平和でモノに溢れた今の日本にあっては、それなりにお金を払えば、いつでも世界中のお酒が好きな時に飲めるという事が当然なことのようにも思えてしまいますが、酒の文化が人の所為である以上、人の有様によって酒の実際に変化が起こることは当然の帰結といえましょう。

人が一定でないように、酒も一定ではない。

お酒のみならぬ、我々が賞味するものすべてが、政治経済、文化科学、国際関係、あらゆるものの影響を受けている。いわんや自然現象の影響をやです。2012年の日本を生きる我々ならば、いま容易に実感できることではないかと思います。

あなたがお酒をお召し上がりの時、
あなたは文化を飲んでいる。人を飲んでいる。平和を飲んでいる。
良きも悪きも、あなたを取り巻く世界の、その複雑な「今」を飲んでいる。


以上、ハバナクラブの15年をゆっくりと嘗めながら、僕が頭の中を巡らせた妄想でした^^;
皆さまがこのお酒を口に含むとき、どんな景色が見えるでしょうか…
複雑な味わいと向き合おうとするとき、いつもお酒は色々な事を教え、また自ずから考える機会を与えてくれます。

 Calvin Klein
「Secret Obsession」

 - Eva Mendes -
 

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